2014年07月29日

第11章第3節「国際文化会館」


 『本棚の中のニッポン:海外の日本図書館と日本研究』(2012) 第11章第3節「国際文化会館」の本文をここに載せておきます。
 本文中に「約26000冊の蔵書を持ち、図書の9割以上が英語」とありますが、2010年の統計では、年間購入約200冊・寄贈600冊、年間利用者約1万人中4割が外国人、というメモが手元にあります。


3 国際文化会館

●国際文化会館と図書室

 国際文化会館(International House of Japan : i-House)は、日本と海外との文化交流を推進する非営利の財団法人です。1952年、ロックフェラー財団やその他の国内・海外の団体・個人からの支援により設立されました。東京・六本木に会館を構え、「日本と世界の人々の文化交流・知的協力を通じ、相互理解をはかること」を目的としています。海外からの研究者・文化人・企業人などの招聘・派遣、講演会・セミナー・国際会議など、国際的な人的交流・知的交流を主としたプログラム・事業を行なっています。
 例えばアジア・リーダーシップ・フェロー・プログラムは、アジアから各分野の専門家を招聘し、ワークショップなどを通して人的ネットワークの形成をはかる、というものです。また出版事業も行なっており、日本の政治・経済・文化などについての日本語の著作を英訳・刊行するなどして、海外での普及に寄与しています。
 
 会館の1階に、1953年に創設された日本研究専門の図書室が設置されています。主に海外からの日本研究者や専門家を中心に、資料・情報及びサービスを提供し、日本と海外との知的協力に寄与することを目的としています。
 この図書室で初代のライブラリアンを勤めたのは、福田なおみ氏でした。福田氏はミシガン大学で図書館学修士号(Master of Library Science : MLS)を取得しており、またアメリカ議会図書館でも勤務していました。日本に帰国後、国立国会図書館が創設される際に、日米間の橋渡し的な役割をしています。1953年、国際文化会館に図書室が設置されるにあたって、その準備のために会館に招かれました。福田氏は、当時まだ日本では珍しかった開架式書架、レファレンス・サービスやレフェラル・サービス(依頼者のために他の図書館・情報機関を紹介し利用の手配をする)など、アメリカ式の図書館サービスを実施しています。またこのような“ユーザのためのサービス”を戦後まもない日本の図書館に普及させ、啓発や人材育成を行なうという活動を行なった人でもありました。1959年に見学旅行が実施されたアメリカ図書館研究調査団の活動(註:『アメリカの図書館』. アメリカ図書館研究調査団. 1960.)も、そのひとつです。そのほか、福田氏のイニシアチブのもと『日本の参考図書』の初版が1962年に編纂・出版されています(註:『日本の参考図書』は現在でも日本図書館協会によって編纂が継続されている。)。
 この『日本の参考図書』をはじめ、多くのレファレンス・ツールや書誌などの出版物がこの図書室から出されています。例えば『A guide to reference books for Japanese studies』(日本研究のための参考図書)は日本に関する情報源を収録し、英文解題も加えたものです。人文・社会系に加え、科学技術分野の情報も収録されています。また、日本について書かれた英語や西洋言語の図書にしぼった書誌・総合目録も作成されています。1967年の『Union Catalog of Books on Japan in Western Languages』は、国立国会図書館、国際文化振興会図書館(のちの国際交流基金)、東洋文庫、そして国際文化会館が所蔵する図書の総合目録です。また、1984年の『Books on Japan in English : Joint holding list of ICU Library and IHJ Library』はICUとの総合目録でした。こういった冊子体の総合目録は、複数の図書館同士で何があるか、何がないかを互いに確認し、相手から借り出したり(ILL)、重複購入を避けるなど、中小規模図書室の効率的な運営とサービスには欠かせないものです。なお、現在では国際文化会館図書室はNACSIS-CATの総合目録に参加しています。

●“窓口”と“つながり”の場

 現在、約26000冊の蔵書を持ち、図書の9割以上が英語だとのことです。日本に関する英文の学術出版物、国際関係・東アジアに関する資料や、日本政府の刊行物などがそろえられています。社会・経済・国際関係・政治分野や芸術分野が多いようです。また雑誌約500タイトルに加え、新聞、電子ジャーナル、『日経テレコン21』や『Bibliography of Asian Studies』などのデータベースも提供されています。

 図書室の利用については会館の正会員による利用に加え、図書会員制度が設けられています。図書室利用のみを希望する研究者や大学院生などを対象としたもので、正会員よりも割安の年会費で資料とサービスを利用できます。また、この会館内のホテルに宿泊した宿泊客もサービス対象者として利用が可能です。
 会員として受けられるサービスとしてメリットが大きいと思われるのが、日本国内の図書館からの資料の取り寄せ(ILL)や、他の図書館への紹介状発行、ではないでしょうか。長期・中期に滞在している会員が、日本国内のどこか別の図書館で資料を参照したり文献調査したりという必要がある場合、わざわざ自国の大学図書館を通すことなく、この図書室に手配を頼むことができます。実際にこの図書室をユーザとして利用していた方のお話では、この会館と図書室を拠点・ベースとし、その紹介状を持って、国内のあちこちの図書館に調査に行くことができた、とのことでした。このような日本の図書館への“窓口”的なサービスは、帰国した会員からも頼りにされているようです。古書を探している、この分野の専門家を探している、など、帰国した会員からのレファレンス質問や資料相談も多く、情報を提供したり、レフェラル・サービス、すなわち、日本の他の図書館・機関への橋渡しを手配したりということが多いそうです。

 先のユーザの方からは、この会館に宿泊し図書室を利用していると、思わぬ人に出会って交流できたり偶然知人と再会したりということがあり、だからこそ利用したくなる、という声も聞きました。実際、この図書室には、国内外の研究者、ビジネスマン、ジャーナリスト、芸術家、政府・外交関係者など、さまざまな方が訪れます。閲覧室を研究・執筆や交流の“場”として活用している方も多いようです。
 また、本書の随所で紹介してきた海外の日本図書館のさまざまな活動(註:日本美術カタログ収集プロジェクト(JAC)、日本専門家ワークショップ(日本研究司書研修・日本研究情報専門家研修)など。))にも、国際文化会館とその図書室が積極的に関与したり、立ち上げのきっかけとなったりしています。そういった意味では、資料の閲覧や提供にとどまらず、日本資料・日本情報を通して国内外の専門家同士が連携・協力やネットワーク作りをしていくため、資料と人、人と人とをつなぐという重要な役割を果たしている図書室と言えるのではないでしょうか。


《参考文献》

・国際文化会館.
http://www.i-house.or.jp/jp/.
・小出 いずみ, 栗田 淳子. 「日本研究と国際文化会館図書室のサービス」. 『情報の科学と技術』. 1990, 40(12), p. 863-869.
 http://ci.nii.ac.jp/lognavi?name=nels&lang=jp&type=pdf&id=ART0003217800.
・「図書室の活動」. 『国際文化会館50年の歩み』(増補改訂版). 国際文化会館. 2003, p.166-187.
 >>国際文化会館図書室とそのライブラリアンたちの活動の経緯が時系列に沿って詳しく述べられています。<<
・加藤郷子. 「小さな図書館の大きな力」. 『国際文化会館会報』. 2005, 16(2), p.1-6.
・林理恵. 「財団法人国際文化会館図書室の紹介」. 『びぶろす』. 2010, 48.
 http://www.ndl.go.jp/jp/publication/biblos/2010/05/02.html.
・林理恵. 「国際文化会館図書室のミッションステートメントについて」. 『専門図書館』. 2009, 235, p.33-36.

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